入賞作品

つい出てしまうお国ことば(笑)。でも、温かみがあって関東出身の私としては、いいな~と思ってしまいます。友人のカメラマンの方は、英語はキングスイングリッシュ、日本語は福島弁という方がいらっしゃいますが、カッコいいですよね? 「自分達の小ささに」などと思わず、この際、博多弁をインターナショナルにしてしまいましょう!

「どこへいっても博多人」

宮﨑 陽子さん(26才、福岡県在住)

今年の3月、新婚旅行でイタリアに行った時のことです。

“イタリアは遠すぎる”と、旅行前は正直乗り気じゃなかった私ですが、着いてしまうと、そこはやっぱり夢の国。何も気にせず、旦那と手をつないだり、いつも仕事の時間が不規則な旦那と、朝も昼も夜も一緒にご飯が食べられたり、街のあちこちに日本人はいても、自分達だけが異国の人になった気分で、まさしく”二人の世界、夢の国”という感じでした。

そんな夢のような滞在期間は、あっという間に過ぎて行き、気がつくと滞在最終日。昼過ぎに出発する飛行機まで時間があったので、最後に街中をぶらぶらして、お気に入りのジェラート屋さんで、二度目のピスタチオジェラートを食べ、ルンルン気分で歩いていました。

イタリアジェラート
(写真はイメージです)

もうこの頃には、滞在初日にあった警戒心なんて、これっぽっちも残ってなく…。「最終日も晴れでよかったね~!」と、そんなセリフを言った直後でした。後ろでカチャカチャッという音がかすかに聞こえた気がしました。はっとして、後ろを振り返ると、そこには12歳くらいの女の子が3人いて、よく見ると私のバッグが、途中まで開けられていました。

普通の人だったら、こんな時どう対応するのかは分かりませんが、私はびっくりしすぎて、思わず博多弁で「えっ?!なんしようと?!」と、半笑いでつっこんでしまいました(笑)その言葉の響きや雰囲気から、恐らく危険を感じなかったのか何なのか、彼女達は逃げるそぶりもなく、「何?何もしてないわよ」という態度だったので、私は思わず、「えっ?何しようと?!」と、今度は少しゆっくりめにハキハキと真面目な顔で言いました(笑)通じるはずもないのに…(笑)

結局、彼女達は知らん顔をして歩いて去って行きましたが、まさか自分がスリに遭いそうになるとは、正直想像もしておらず…。被害がなかったからこそ、今では笑い話ですが、その直後は、本当に心臓はバクバク、足もガクガクでした(笑)

今回のこの一件で、”結局、どんなに遠くに行っても、どんなに素敵な夢の国に行っても、博多人は博多人なんだな~”と、なんとなく自分達の小ささをしみじみと感じた私達でした!

その他の応募作品

つい言ってしまって後悔することってありますよね……。新婚旅行だっただけに記憶に残ったという応募作品です。

言わなくてもよかったかな…

松本俊彦さん(47才、京都府在住)

二十二年前に結婚した。新婚旅行先は北海道だった。今でもそうだろうが、その当時も新婚旅行で海外に行かない人は少なかった。しかし、私たちは二人ともあまり外国に興味はなく、北海道にも行ったことがなかったので、何の不満もなかった。六月の北海道はすっきりと晴れていて、さわやかだったのを覚えている。

日数は七日間。とは言っても北海道は広く、また電車の旅も趣きがあっていいだろうと、まったく飛行機を使わなかったので、ほとんどが移動時間の旅になってしまった。初日も朝京都を出たのだが、函館に着いたときにはもう夜になっていた。京都に帰るのも電車だった。もう廃止されてしまった特急日本海。その名の通り、北陸線を日本海沿いに南下する、青森発大阪行きの寝台特急だった。別に金を惜しんだわけではない。寝台車というものに一度乗ってみたかったのだ。

青森駅を出発したのが午後八時ぐらいだっただろうか。そして翌朝、列車は滋賀県に入り、私たちが降りる京都駅までは、もう十数分のところまで来ていた。同じ列車に、五十代の夫婦が乗り合わせていた。私はその人たちと言葉を交わしてはいなかったが、亭主関白だなと思っていた。男性の物言いが、いちいち偉そうだった。

女性が、車窓のびわ湖を見て言った。「これ、びわ湖かしら」男性が答えた。「そんなわけないだろう」おそらく彼は、湖がそんなに大きいはずがないと思ったのだろう。しかし、北陸線を走る列車の左側に海が見えることはない。私は思わず口をはさんでしまった。「いえいえ、びわ湖ですよ」男性は何ともきまり悪そうな顔になり、女性はしかしそれ以上何も言わなかった。亭主関白とは、実のところこんなものかなと思った。もしかしたら、私は言わなくてもいいことを言ったのかもしれなかった。二十二年間、妻と会話する中で、何度もこのことを思い出す場面がある。



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